My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「ユウのこと、信用してないからって訳じゃないよ。万が一のことを考えて、迷惑にならないようにしてただけ」
「迷惑って…俺がそんなふうに考えると思ってんのか」
「それは……わからない、けど…でも、万が一ってのも、あるし…」
「お前………はぁ」
あ、また。
ノアのことを話した時みたいな、大きな溜息。
「んっとに…なんで言わねぇんだよ。なんで一人で解決しようとするんだ。お前は」
「…ごめん」
迷惑、かけたくなかったし…それに飲み始めたのも最近だったし。
わざわざピル飲んでます、なんて…偉そうに主張することでもないかな、って…。
「こ…頃合いを見て、話そうとは思ってたんだよ」
「そういうことはすぐに言え。迷惑だなんて思わねぇし、お前の体のことなら俺の問題でもあるだろ。無駄に色々考えちまったじゃねぇか」
「…ゴムの消費とか?」
「バッカ。違ぇよッ」
「ぁたっ」
ビシッとユウの指がデコピンして私の額を弾く。
いつもよりちょっと痛い。
「そういうもん飲むと体に負担掛かるんだろ。それだけ大きな効果があって、副作用が何もない薬なんてねぇだろうが」
ユウの手が私の腰に回って、簡単にひょいと持ち上げられる。
思わずバランスを保つように肩に手を置けば、そのまま膝の上に座らされた。
「いつから飲んでたんだ」
「え…っと…二ヶ月前くらい?」
「体に異変は? 些細なことでも言えよ」
「ん、と……ないと、思う」
「本当かよ」
「うん。大丈夫」
それは本当。
元々体作りはしっかりしてたから、変に体調不良になることなんてなかった。
それでも不安は尽きないのか、ユウの目は抱いた私の体を頭から爪先までじろじろと見ている。
少し不安げな表情。
…こうしてみると、二人きりでいる時は随分と表情豊かになってくれたなぁって思う。
場違いだとは思ったけど。
そんなユウの表情と、心底身を案じてくれている心遣いが嬉しかった。
「ごめんね」
もう一度素直に謝って、そっと額を重ねる。
「ちゃんと言うから」
薬のことだけじゃなくて、ノアのことも入り混じった思い。
ちゃんと言おう。
ユウにちゃんと伝えなきゃ。
そう、改めて強く思った。