第43章 羊の詩(うた).

　少しだけ息を整えるように、深呼吸して体を落ち着かせる。
　そうして座り込んだユウの足の付け根に、四つん這いになって顔を寄せた。

　大きく反り勃っている男根に近付けば、むわ、と鼻を突く発情した強い臭い。
　私の愛液も混じって艶やかに光っていて、なんだか凄くいやらしい。

　前にフェラした時とは違う。
　ぴくぴくと微かに震えているのは、本当にそれだけ限界が近いんだろう。
　…ユウの息もまだ微かに荒いし。
　本当、よくここまで耐え切れるものなんだなぁと感心する。


「じゃあ…」


　失礼します、と心の中だけで一礼して。そうと両手で優しく握り込めば、ぴくんと大きく震えた。


「っ…」


　握っただけで、ユウの声なき吐息が立つ。
　それだけ敏感になってるんだ……なんか、ドキドキする。

　以前より臭いもきついし大きさも多少違う。
　でも、以前よりももっとすんなりと顔を寄せられていた。

　両手で愛液を拭うように優しく扱きながら、自然と近付けた唇で亀頭にキスをする。
　ぱくりと開いた小さな鈴口から溢れる、透明な雫。
　それを丁寧に舐め取っていけば、苦みが口に広がった。

　美味しくなんかない。
　でも、その反応がなんだか愛おしい。
　以前は感じ得られなかった感情だ。


「ん…む、」

「ッ…ぅ…」


　そのまま亀頭を咥え込む。
　以前は先端を咥えるだけで精一杯だったけど…できるだけ奥深く、咥えられるだけ飲み込んでみた。

　くしゃりと、ユウの手が私の髪に指を差し込み頭を掴む。
　少し息苦しかったけど、その顔が見たくて上目遣いになんとか見上げてみる。

　見えたのは、上気した頬に熱を帯び潤んだ真っ黒な瞳。
　浅く開いた口からは、荒く熱の込めた吐息を零している。
　激しく交わった所為か、額に浮かんでいた一滴の汗が頬を伝って、ユウの顎のラインを辿ってぽたりと落ちた。

　なんていうか、凄く…官能的。

　偶に女性に間違われる程の顔立ちをしてるけど、そこには男性らしい色気を纏ったユウの感じる顔があった。
　見惚れるというか、目が奪われる。

　さっきまで激しく責められていたから、交わっている時はこうしてじっくり顔を伺う暇はなかったけど。
　こんな顔してたのかな…ずっと。