My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
願いを口にすれば、行動に起こしてくれるのは早かった。
身を起こして、着ていた上着や中の私服を呆気なく脱いでいく。
光に照らされて晒し出される、ユウの肌。
修練場や任務時に、偶に見ることはあったユウの肌。
でも、こういう空気で、こういう場面で、こんなにはっきりと見たことはなかったから…凄く、ドキドキする。
引き締まって程好く筋肉が付いた体。
左胸から肩にかけて刺青のように刻まれている、第二使徒の呪符の模様。
それから──…って。
し、下はあんまり見ないようにしよう…うん。
「ユウ…さ、寒くない?」
なんだか気恥ずかしくて、その場凌ぎに適当に声をかける。
…我ながら下手なその場凌ぎだと思う。
「んだよ。脱げって言ったのは自分だろ」
仰る通りです、はい。
「別に寒くなんてない」
裸を晒したユウの体が、ゆっくりと覆い被さってくる。
「雪がいるなら」
第二使徒の体だから寒さに平気なのかな、なんて考えてたら予想外の返事がきて、不意打ちに胸が高鳴った。
…それ、私も同じかもしれない。
あんなに一人でユウやコムイ室長を待ち続けていた時は、布団を被っていても寒かったのに…今は、あんまり感じない。
寧ろ、ユウに与えられる刺激で体は熱いくらい。
「…うん」
素直に頷いて、抱きしめようとしてくれるユウに応えるように両手を伸ばす。
──だけど。
耳を掠めたのは、ジャラリと重い鎖の音。
伸ばした両手首に嵌められた枷と鎖が視界に映って、動きが止まってしまった。
そうだ。
手枷、嵌められているから…鎖が邪魔をして、ユウを抱きしめ返すことができない。
「……」
一気に現実に引き戻された感じがした。
今この場にある甘い空気もユウの存在も、所詮はその場凌ぎの夢。
この硬くて冷たい鎖が現実なんだと、静かに主張してくるようだった。
そんな現実を目の当たりにして、体が少しだけ震える。
……寒い。