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My important place【D.Gray-man】

第42章 因果律












 淡い光の世界

 幾重もの枯れ花の佇む湿地帯の中

 手を取り微笑み合う 男と女



 誰の目から見てもわかる

 "幸福"という名を形にしたような光景

 そんな幸福の空気を纏ったまま

 光の先へと消えてゆく








「…っ…」








 いつもその者の消えゆく最後を見届ける時

 雪は泣き出しそうな顔をする

 その感情の理由もわからぬだろうに

 泣きたい程に 無意識の想いが膨れ上がっているのだろう



 それ程までに あの者を想う心は強い



 だからこそ引き離さねばと

 涙は溢さず 最後にはひとりで闇に佇む雪を見る度に

 そう強く思う








「……」








 光が全て消え去った闇の中に ひとり

 理由のわからない感情に押し潰されそうになりながら

 褐色の肌を抱いて俯く



 そんな雪を残して意識を遮断する

 その間際に、つい

 足を向けそうになる

 そんなに哀しむのならば もう見るなと

 その目を覆ってやりたくなる



 その光景を見せつけているのは

 他ならぬワタシであろうに








「…行かないで」








 俯き漏れる 小さな声

 子供のような 拙い雪の叫び



 例え声を大にして叫んだとしても あの者は応えはせぬよ

 じゃからもう縋るのはやめよ








「消えて…いかないで」








 縋れば縋る程 雪自身が辛くなるだけだ

 じゃからもう望むのはやめよ



 あの者は誰にも勝る強い思いで あの女を想い続けている

 それは紛うことなき"愛"だ



 あの者が何よりも愛しているのは

 ノアである御主ではない

 共にエクソシストであった あの女なのだ
 









 人間とは不思議な生き物よ

 何がどう形を成して"愛"と成り得るかなど

 誰かに学ばされてきた訳でもない

 だというのに

 知った顔で易々とその言葉を口にする



 想いの形など 想いの大きさなど

 それこそ 目に見えぬものは誰にも量れはしないもの










 こうして その脳を覗き見ることのできる

 ワタシの他には









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