My important place【D.Gray-man】
第10章 夢Ⅲ
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「心臓に悪いな、あの美形は…」
未だにあの至近距離の寝顔を思い出すと、なんだか顔が熱くなる。
その熱を追い出すように、ふるふると顔を横に振った。
駄目だ、こんな時に余計なこと考えてちゃ。
周りに集中しないと、いつゾンビ化人間に襲われるかわからない。
「これでいいかな…」
今私がいるのは病棟の何処かの倉庫。
見つけた衣類を広げて大きさを確認する。
このサイズなら、多分神田も入るかな。
寝ている間に薬が切れたらしい、神田の体はすっかり元の大きさに戻っていた。
でも身に付けていた服は、縮んだ体に合ったサイズのものだったから。代えの服、用意してあげないと。
じゃなきゃ無駄に露出した足とか見慣れないし、目のやり場に困る。
そう思い、寝ている神田の体に布団を掛けたまま一人、衣類調達に来ていた。
ついでに何か食べるものないかな…お腹減った。
「病棟の食料庫って何処だろ…」
見つけたシャツとズボンを手に、倉庫を出る。
見えた窓の外はまだ薄暗い。時刻は朝方。
嵐は未だ、勢力を弱めないまま教団の周りを取り囲んでいた。
外、出られるかな…。
──ズキ
「…ん、」
雨が降っているからなのか、額の傷が疼く。
もう慣れたその痛みに、絆創膏に触れることなく唇だけ噛み締めた。
神田といた時はすっかり忘れてたのに、一人になると思い出す。
私の体の得体の知れない出来事。
なんなんだろう。
『残念ながら、君に素質はないようだ』
昔に言われた。
残念だと口にしながら、それは冷たく吐き捨てるように。
散々その時に弄くり回されたから、今更そんな兆候が出るはずもない。
これはきっと違う。
「…蕎麦とか、あるかな」
落ちる思考を止めるように、言葉にして吐き出す。
神田が好きなお蕎麦、食料庫にあるといいんだけど。