My important place【D.Gray-man】
第10章 夢Ⅲ.
「──…」
なんだか優しい、夢を見た気がする。
でも思い出せない。
「…はぁ」
最近目覚めが悪いな…何か見てる気がするのに、起きると憶えてない。
薄らと目を開けて見えたのは、ここ最近ですっかり見慣れた自分の病室。
溜息混じりに思い出す。
そうだ、確か──
「──っ」
瞬間、首筋に生暖かい空気が触れる。
ぞわりと鳥肌。
『ハァアアァ…』
昨日トイレで聞いた、知らない吐息混じりの声を思い出した。
つぅ、と冷や汗が首筋を伝って、恐る恐る振り返る。
もしかして──
「………へ?」
見えたのは、視界いっぱいの美形顔。
……神田?
「…っ!」
というか近い!
あまりの近さに咄嗟に下がろうとして、ベッドのギリギリに自分がいることに気付く。
それ以上下がれなくて、目の前にある神田の寝顔に自分の顔が熱くなる。
サラサラの黒髪。長い睫。
目鼻立ちの整った顔。
「ふ、…」
静かな寝息は、耳を澄ませないと聞こえない程のものだったのに。
あまりに近い距離感に、音だけでなくその空気までが顔に触れる。
さっき感じた首筋の空気は、神田の寝息だったんだ。
……というか。
小さくないんだけど、神田。
いつもの大人びた姿に戻ってるんだけど…!
「せ…狭い…」
ラビ程じゃなくても、ほぼ同等に背丈のある神田の身長は180cm越え。
そんな男性とシングルのベッドで、普通に並んで寝られるはずもない。
なんとかギリギリ触れずにいるけど、少し身を捩れば簡単に体が触れてしまう。
「……」
まずい。
体がぶつかったら、寝相と勘違いされて殴られる。多分。
起こすか否か。
その選択肢の答えはすぐに出た。
即刻、黙ってベッドから撤退です…!