My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
ガヤガヤと騒がしい食堂。
いつものように人気の少ない場所を選んで、其処に座る。
食堂の隅に設置されたその席からは、広い内装が見渡せる。
エクソシストの団服姿の者、科学班の白衣姿の者、警備班の制服姿の者。
その中には、上から下まで真っ白なマント姿の者もいる。
というか、そいつらが食堂の大半を占めてる。
この黒の教団で一番死亡率の高いそいつらの職は、一番人数も多い。
教団の手足となって働いている、探索班(ファインダー)。
「……」
食べ終えた蕎麦蒸籠に箸を揃えて置くと、熱い茶を喉に通す。
真っ白で目立つマント姿のそいつらの中に、一際見慣れた姿はない。
野郎ばかりの中で気遅れすることなく、平然と混じっていた女の姿。
任務から帰ってきたら、一番に俺の所に来いと約束させた。
隣の席に目を向ける。
其処には当たり前に座って共に食事を取っていた、あいつの姿はない。
「……まだ長引いてやがんのか」
思わず溜息混じりに吐き出してしまった。
ずっと溜め込んでいたことを、伝えたいとあいつは言った。
やっとの思いで決意したんだろう。
だから待っていられるように、任務も早めに終えて帰ってきた。
…帰ってきてやったのに。
あれからもう一週間以上過ぎてんぞ。
「チッ」
ゴツ、と湯呑みを机に置いて舌打ち。
あいつもファインダーの端くれだ。
俺とAKUMA討伐にもよく行っていた奴だ。
そう簡単に任務先で命を落とすなんてことはしないはず。
…ただ、必ずしもそうだとは言い切れない。
今回の任務はファインダーだけの調査任務だと言っていた。
その任務先でAKUMAにでも襲われたら、ただの人間であるファインダーに戦う術はない。
下手すれば全滅だってあり得る。
この教団にいれば、よく耳に入ってきていた情報。
任務先でのファインダーの死。
そんな最悪な予想が頭に浮かんで、つい眉間に力が入った。