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甘く、ほろ苦く。

第1章 お揃い


「加州ー?」
アイツ、何処に行ったんだ。
遠征から帰って来たらネイル塗り直してとほざいていた割には
何処探しても居ないじゃないか。

「あ、あるじさま!!」
軽快な足取りで此方に短刀の今剣が駆けて来た。
「おっ、今剣。加州見なかった?」
「えっと、あ、たしかあっちのえんがわのところにいたとおもいますよ!」
縁側か…
「わかった!教えてくれてありがとっ!」
私はお礼に頭をくしゃっと軽く撫でてあげた。
えへへ、と何とも可愛らしい反応をしてくれた。

そろそろ歩く…否、走るのは疲れてきた。
走ると言っても小走り程度なのだが。

「こんなところに居たのか。お前」
「思ったより遅かったよ…主。忘れられたかと思った」
「そんな訳ないだろ」
素っ気無い会話に聞こえるかもしれないがこれが普通なのだ。
私と加州の間では。

「ほら、手出しな」
静かに手を差し出した加州の手は、微かに震えていた。が、私はお構い無しに手を掴んでネイルを塗り始めた。
「…なぁ」
戸惑い気味に加州が口を開いた。
「ん?どうした?」
「何でアンタ、こんな俺を選んでくれたんだ?」
「どういう意味だ」
少しの間があったが加州は話してくれた。
「可愛くない俺なんて選んだ理由が知りたいだけ」
加州の言葉が消えると同時に右手のネイルが塗り終わった。
私は一旦、ネイル道具を傍に置いた。
「結構単純だぞ?」
「良いから…教えて」
消え入りそうな程の声量で加州は言った。
その姿に私は我慢出来なくなり、加州を抱き締めた。
ビクッと身体を強張らしたがすぐに背中に手を回してきた。
「あ、主?」
「黙って聞いてろよ」
コクンと加州は頷いた。
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