第1章 S
「嫌か嫌じゃないかを聞いてるんじゃないんです。
やれ、と言っているんです」
2人の間の空気がまた、ピキッと凍る。
「言っておくけどね、私がLにこういうことで素直に従うのはSである時だけだからね」
皆さんには分からない意味合いの言葉。
「分かってます。
Sじゃない時には、強制はしませんので」
存分に甘えてください。
「…分かったよ。
それより、1つ言っても良い?」
「なんですか?」
一息置いてから、話し始める。
「私、月くんと面識あるんだけど」
「面識がある?会ったことあるんですか?」
キリ、とLの顔が引き締まる。
「2、3度程度だけど」
「その時の印象は?
まさか、本名話したりしてませんよね?」
「本名は大丈夫、話して無いよ。
最初に会った時は、無欲な人なんだなって思った」
「と言うことは、次に会った時は別の印象を持ったと?」