第4章 1つのポッキー
大学へ向かう途中、Lからの戦利品である苺味のポッキーを食べる。
「美味しい…」
やっぱり、美味しいものを食べた時や嬉しい時は頬が緩んじゃうよね。
「美味しそうだね、俺にも1本くれる?」
「あ、月くん。どうぞ」
「ありがと」
袋から1本引き抜き、口へ運ぶ月くん。
「ん、うま…」
「でしょ?」
分かってくれた嬉しさに、思わず口元が緩む。
「っ…うん」
「どうしたの?顔赤いよ?」
「な、なんでもないよ」
フイッ、と顔を逸らす月くん。
「変なの」
「変じゃないよ」
『何イチャイチャしてるんです、妬きますよ』
Lに妬かれたら、大変。
そう思って、話題を逸らす。
「月くん、今日の一限って何?」
「数学だよ」
「そう」
不得意科目の1つだ。
「栞ってさ、ツンデレ?」
「え、そう?」
「うん、なんかそう見える」
「そんなこと、初めて言われた。
良く冷めてる、って言われるけど」
「全然冷めてなんか無いのにな」
「…ありがとう」
やっぱり月くんは優しい。
こんな優しい彼を騙しているのは、少々心苦しい。