第2章 二重人格者
紅茶を注ぎ、角砂糖を溶けきれなくなるギリギリまで放り込む。
「はい、どうぞ」
それを黙って受け取り、一口。
「松田さんも、コーヒー淹れたので良かったらどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「別に敬語じゃなくて良いですよ、私の方が歳下で立場も下ですから」
「そっちこそ敬語じゃないですか。
…名前、知りませんけど…」
「名前…?
あ、雪と言います」
「そうなんだ、じゃあ雪ちゃんって呼ぶよ。
自己紹介したかもだけど、俺は松田桃太。よろしくね」
「ちゃんってキャラじゃないけど…よろしくです」
「基本、女の子は皆ちゃん付けなの」
「そうなんだ」
“ 女の子 ” …か。
「雪ちゃんってクールだね」
名字は明かしていないことに、全く気づいてない様子。
「雪、チョコレートとドーナツとケーキ」
口を開こうとしたら、それを遮るようにLが言った。
「紅茶のお代わりは?」
「淹れて」
「分かった」
漆黒の長い髪を翻して、準備をしに歩いて行く。
「惚れちゃダメですよ」
Lのトゲトゲしい声が聞こえた。
「わ、分かってるよ」
世界の名探偵、Lを敵に回したら終わりだってことぐらい。