第1章 S
そして、しばらく月くんと並んで歩く。
男女が並んで歩いてたら、それはカップルって思われたりするのかな。
なんて、一瞬でもそんなことを考えたのはLには内緒。
だって、ああ見えてLは嫉妬深いところがあるから。
「あ、ここだよ。月くん」
「え、ここで良いの?」
着いたのは、なんとホテルの前。
「うん、私ね…持病持ちなんだ。
そのせいで親とか、友達から疎まれちゃったんだよね…。
だから、周りの目とかそういうものを気にしなくて済むここに住む形になってるの。
ほら、近所付き合いとかも無いでしょ?」
確か、こう言えば良いんだったかな?
「月くんは…私と友達、辞めちゃうよね」
「え、どうして?」
「私が持病持ちだって知ったら、皆距離置いちゃうから…」
「俺は距離なんか置かないよ、絶対。
これからも俺と栞は友達、だろ?」
「…ありがとう」
彼も優しさに、笑みが零れる。
そんな優しい月くんに嘘つくのは、心苦しい。
嘘だけど、嘘じゃない。
微妙な “ 設定 ” を月くんに対して作らなくてはならない。
だって、それもLから言われたことでもあるから。