第29章 颯希の生い立ち、そして真実。
翌日。
彼は機嫌良く家を出た。
そのあと私は指定されたカフェに向かう。
痣を隠すためとはいえ、長袖は暑い。
照りつける日差しが、私には痛い。
だけどがまん、少しの我慢。
そうすれば何か変わる。
『龍太郎さん』
『あ、智恵ちゃん!』
やっぱり明るいトーンだ。
笑顔も、声も、表情も、
彼は何もかも明るくて眩しい....
『...智恵ちゃん、もう我慢しなくたっていいよ』
突然、彼から発せられた言葉に、
私の目からは無意識のうちに涙がこぼれていた。
『お腹の子のためにも、あんなところ居たらダメだよ』