第29章 颯希の生い立ち、そして真実。
表示された名前は[神代龍太郎]だった。
出たくないわけではないけれど。
私はなんとなく躊躇ってしまう。
しかし、電話は鳴り続ける。
彼がやってくる。
その前に。
『....はい』
『あ、もしもし?』
明るいトーンの龍太郎さんの声に、
思わず涙ぐんでしまう。
『明日の昼に、会えないかな』
そのお誘いはどう言う意味をさしているのか。
私には全くわからなかった。
けれど逃げ出したかった私はお誘いを受けた。
『じゃあ、カフェで会おう』
そうして電話は切られた。
痣が、キリキリと痛む。