第10章 episode8
遠い昔を思い出すなかで、とつぜんドアが開いた。
「諒夜さん」
颯希ちゃんだった。
少し切なそうな表情で、俺を見ていた。
「大丈夫、ですか?」
「ああ、ごめんね。嫌なとこ見せちゃってよ」
へへ、と苦笑い。
誤魔化しもきかない、か....
「お姉ちゃんが何かしましたかね...?」
「そんなことじゃあ、ねぇのよ。そんなことじゃあ...」
夏希ちゃんは関係ない。
これは、俺が勝手にイラついてぶつけたこと。
「お姉ちゃんが泣いたんです。自分がされてイヤなことを、諒夜さんにしたんだって...、どういうことなんですか?」