虹彩異色症の女神さんは2人の炎に愛されました【エース・サボ】
第2章 プロローグ
賑わった街中を歩く白いフードの姿。
長く伸びた美しいブロンドの髪。
彼女の右目は影になっていて何も見えない。
人々はそんな陰気な彼女を横目で見ながら通り過ぎていく。
_近寄るな_
彼女からそんなオーラが発せられている。
人々は誰も、彼女には近寄らなかった。
「あっ、ごめんなさい!!」
若い主婦だろうか。
ぶつかってきた。
怯えて震える女を他所に、アリスは歩き去った。
別に痛くも痒くも無い。
私が怖いのなら近づかなければいい。
罪の無いものに手を出す気はない。
私に害を与えるものなら即殺す。
『フッ』
アリスは鼻で笑った。
何だと言うの。
私はどこまで壊れていくの?
どうせ・・・
もう失くして困るものも思い残すことも何も無いのに。
何時死んでもいい。
メチャクチャになって全てを消してしまう前に・・・
『・・・』
正しいかどうかなんて分からない。
逃げて逃げて逃げたこの場所は、”街”だったのだから。
怖いものなんて無い。
全てに勝って、全てを失くした。
『もう・・・』
どうでもいい。
何もいらない。
悲しいのは一瞬だけ。
残るのは虚しさなんだから。
さようなら・・・
_エース・・・_