第3章 思い出の断片
引っ越しが起きてから数時間帯が経ち…
夜が訪れる
休憩になったアリスは部屋に戻ってふと思い出す事がある
元の世界の記憶…
この国…スペードの国に来てからだ…
夢にも出てきたりする
ハートの国やクローバーの国…ダイヤの国では夢に見たり思い出すことが無かった気がする
隣の家に住んでいて水色の髪の女の子で警察官の家系の娘の…
名前は…
すぐそこまで思い出せそうな気がするけど思い出せない
あの子の…名前は…
大切な思い出の一つの気がするのに思い出せない
「貴方は…」
水色の髪の彼女は振り向かずに歩いていこうとする
「待って!」
アリスは無意識に手を伸ばそうとするが彼女は無数の水色の蝶に変化して消えていく
その直後、一瞬アリスの姉・ロリーナの姿がチラつく
「アリス、寝ているの?お友達が心配してるわよ」
姉の声が頭に響いてくる
姉の事を最後に思い出したのは何時ぐらいだろうか
姉さんはまだ帰りを待ち続けているのだろうか
アリスは帰らないと今まで決めて来た
迷いがないというわけでもないけれど
先程から通り過ぎていく記憶の断片
捕まえようとすると逃げていく
時計の様に
「まって!」
アリスは再び手を伸ばす
「アリス!!!」
ふと誰かに呼ばれた気がする
この声は…
………
……
…
目を覚ますとクローバーの塔の自室だった
ベッドの横にはナイトメアが立っている
「ナイトメア!!」
以前、クローバーの国の時にも何度か入られていたのでそんなに驚かなくなってきた
(慣れてはいけない気がするけど)
「アリス、悪い夢を見たんだな」
(悪い夢…)
悪い夢ではなかった
「悪い夢では無かった」
そう、悪い夢では無かった
まるで自分に言い聞かせるようにつぶやいた