第8章 チョコレートケーキ
時は過ぎ高校生活最後の年の春
俺のバイト先に新人が来た。
「舞ちゃん!?」
「薫くん…?」
あの事件から冬を越え、さらに春になるまでなんの連絡も取り合ってなかった元カノが今、目の前にいる。
「あれ、二人とも知り合い?なーんだ、ちょっと話してて良いよ~~!」
って店長………
(気まずいんだよ……)
「あっ、か、薫くん…この間はごめん…あのあと考えたんだけど、薫くんの言ってること正しかった。最低なんて言ってごめんね、あのときはちょっと怖くて…何て言うか…」
舞ちゃんはそう言って首筋を手で覆った。
(相当怖がらせてたんだな)
「怖がらせちゃってごめんね。」
舞ちゃんは黙って首を振った。
俺はいちばん確認したかったことを口にする。
「俺のこと嫌いになった?」
当たり前だ。
あんな最低なことをしたんだから。
「なってないよ。」
なんで?
俺あんなことしたのに。
「薫くんは悪くない、だってあのとき薫くん、悲しい顔してた。私がさせてるって気づいたから。私が悪いの。」
そんなこと言ったら
まっちゃんと舞ちゃん応援するって決めたのに
舞ちゃんのこと諦められなくなっちゃうよ。
まっちゃんごめん、最後にチャンスをください。
「正直に答えてね。今、好きな人は誰?って聞かれて頭に浮かぶのは俺?それともまっちゃん?」
お願いだ
俺って言ってくれ。
「……叶多。」
舞ちゃんが言葉を発したのと同時に店長が入ってきた。
俺は笑顔で
「応援してる!」
と言った。
舞ちゃんは
「薫くんも、私なんかよりもっともっといい人見つけてね。」
(あーあ、初めて本気だったなぁ。)
俺の恋は終わった。