第13章 中忍試験〜はじまり〜
波の国から戻り、またいつもと変わらぬ日々が明けては暮れる。
木ノ葉の里は今日も抜けるような青空。
穏やかな風が清々しい木々の新緑を揺らしていた。
そしてここ、空風家にも他に漏れず何気ない朝が訪れる。
目覚ましが鳴る前に目を覚ましたリエはアラームを止め、そろりとベッドから抜け出した。
隣で穏やかな寝息を刻むサスケを起こさぬよう、細心の注意をはらって寝室を後にする。
青い果実 13
朝食の支度をするのも、当たり前の日常。
幼い頃から毎日のようにやっている為相変わらず手際のよい彼女の手先は、次々と仕上げにかかっていた。
「よし。そろそろサスケを起こさなくちゃ」
料理はもともと好きだが、愛する人の為につくる料理は格別に楽しいものだとリエは思う。
リエはまだ夢の中の彼を起こそうと寝室に向かった。
ベッドに目を向ければ、肩まですっぽりと布団にくるまり丸くなって眠るサスケがいる。
そんな姿が可愛くて、ついリエの顔が緩む。
このままそっとしておいてあげたくもなるが、今日も任務が入っている。
サスケの肩を優しく揺すりながら声をかけた。
「おはようサスケ。もう朝だよ」
「ぅ…ん……?」
布団に顔をうめたまま、僅かに覚醒した瞼が震える。
リエはサスケのそんな可愛い仕草にクスリと微笑んだ。
「遅刻しちゃうから、起きないと」
耳元でそう囁くと、ようやくサスケはうっすらと瞼をあけた。
「……リエ……」
サスケはリエの頬に手を伸ばし、甘えるようにキスを強請る。
「…んっ……」
これも、いつもの日常。
鈴を転がすようなリエの声と、触れるだけのくちづけで、サスケは今日も鮮やかに目覚めるのだ。
「おはよ」
「おはよう……。もう朝ご飯出来てるから着替えて顔洗って、早く来てね」
「ああ。すぐに行く」
他のサスケを知る者には想像も出来ないであろう、とろりとした甘い表情で、彼は頬を染める愛しい彼女にそう告げた。