第29章 音の誘い
イタチにも
あのナルトにさえも劣っているなんて。
オレは強いと、強くなったといい気になって、結局、昔と何一つ変わっていない。
そんな自分が嫌で、イラついて、仕方なかった。
((オレは今まで…何をしていたんだ……!))
木の上でぎゅっと拳を握り締め、サスケはその苛立ちを幹にぶつける。
と、突然鋼鉄線が身体を取り囲み、サスケは木に縛り付けられた。
何者の仕業かと睨みつけた先には、見慣れた顔があった。
第七班担当上忍、はたけカカシだ。
青い果実 29
「……なんの真似だ」
苛立ち声を低くするサスケにお構いなしに、あっけらかんとカカシは答えた。
「こうでもしないと、お前逃げちゃうでしょ。大人しく説教聞くタイプじゃないしね」
返す言葉もなくチッと舌打ちをするサスケを見下ろし、カカシは続ける。
「サスケ。復讐なんてやめとけ。復讐を口にした奴の末路は悲惨なもんだ。今よりもっと自分を傷つけ、苦しむことになるだけだ。残るのは虚しさだけ……」
「黙れ!あんたに何がわかる!知った風なことをオレの前で言ってんじゃねーよ!!」
言葉を遮りそう噛み付くサスケに、落ち着けとカカシが諭す。
「俺も大切な人を殺されているからな、失う苦しみは嫌ってほど知っているよ。俺もお前もラッキーな方じゃない…それは確かだ。でも最悪でもない」
その言葉に、サスケは顔をしかめる。
そんな彼に、カカシはにっこりと笑ってこう言った。
「俺にもお前にも、もう大切な仲間が出来ただろう」
サスケの脳裏に、リエの笑顔が真っ先に、
そして、ナルトとサクラの顔が浮かんだ。