第28章 すれ違う心
「…では、ナルトはお任せします。私は任務があるし、千鳥のこともあるので」
自来也にそう断ると、カカシはサクラの元へ来て、泣き止まぬ彼女に笑いかけた。
「サクラ。大丈夫、またすぐ昔みたいになれるさ。元気だせ」
いつもと変わらぬその笑顔に安心したのか、はたまた張っていた気が抜けたのか、サクラは更に大粒の涙を零す。
あらら、と苦笑しながら困ったように頭を掻くと、カカシはリエに目を向け、ゆっくりと歩み寄った。
「リエ、サスケのことはとりあえず俺に任せて。あいつが帰って来たら、笑って迎えてやってよ。ね」
「……はい」
暗い顔で俯くリエを安心させるように、ポンポンと優しく頭を撫でてくれるカカシの優しさに、思わず涙が出た。
「サスケを、お願いします……」
リエの震える肩に手を置くと、大丈夫と言わんばかりにカカシはにっこりと笑って瞬身で去って行った。
サスケとすれ違っているのは、ナルトだけじゃない。
リエも、同じだ。
ずっと胸の内にしまったままだったイタチに対する気持ち。
サスケと間逆な、変えられない思い。
言葉にしたら、この関係が崩れてしまいそうで、怖くて。
言わなくてもきっと、サスケはわかっている。
そうやって、逃げ続けた。
イタチの存在は自分にとっても、サスケにとっても大きすぎて、いつまでも避けていられる問題ではないというのに。
サスケの心の中に渦巻くものは、何も解消されていない。
それどころか、イタチに再会してから格段に大きくなったサスケの中の闇。
思いをぶつけていれば、きちんと話していれば、何か変わったのだろうか。
目覚めてから、サスケは一度も目を合わせてくれなかった。
初めて、あからさまに拒絶された。
彼を失いたくないのに、傍にいたいのに、その気持ちと裏腹にどんどん彼が遠ざかっているような気がして
悲しくて、情け無くて、涙が止まらなかった。
きっとサスケには、今のリエの言葉は届かない。