第4章 「あの日」
一体何があったのか、サスケに問いたかった。
けれど、この惨状を口にすることでサスケが壊れてしまいそうで、出来なかった。
そもそも、なぜ自分はこんなに冷静に現状把握をしようとしているのだろうとリエは思う。
あまりの衝撃に倒れてしまいそうなのに。
あまりの悲しみに泣き喚きたいのに。
突然のことすぎて、わからないことが多すぎて、心に頭が追いついていないのかもしれない。
今一番辛いのは、サスケだ。
家族を失ったときの悲しみは、よく知っているから。
自分が泣いてしまったら、きっとサスケは悲しみを吐き出せなくなってしまう。
それに、もしこの惨劇が
ずっと追い続けた憧れの兄の手によるものだとしたらーーー
サスケの中にあるのは、悲しみや辛さだけではないのかもしれない。
リエは、サスケを包み込むように、彼の背中から抱きしめた。
「……私が……いる。ずっと、サスケの傍にいるから」
今言うべきではないのかもしれない。
サスケをもっと傷つけるだけかもしれない。
でも、伝えたかった。
家族を失って、一番恐いのは
孤独だと、思うから。
絶望の淵にいる彼に、手を差し伸べたい。
言葉をかけてあげたい。
イタチとサスケが、そうしてくれたように。
「サスケは、独りじゃないよ…」
存在を伝えるように抱きしめる力を少し強めると、サスケは身体を強張らせ
そして
初めて、リエの前で声をあげて泣いた。