第28章 すれ違う心
綱手という医療スペシャリストを探す旅に出るというナルトと自来也を見送り、リエはサスケを背に担いだガイと共に、木ノ葉の里へと戻った。
道中ガイが気を紛らわせてくれようとしたのか、いつものようにギャグ(?)を交えながら明るく振舞ってくれたので、リエも懸命に笑顔をつくったが、上手く笑えていたとは到底思えなかった。
サスケがイタチに向けた憎悪の目が
悲痛の声が
何度も何度も、頭の中で蘇る。
『オレは復讐者だ』
死の森で見た、大蛇丸がつけた呪印の力を纏ったサスケ。
あのときからずっと、不安が消えない。
サスケが闇の力にのまれて
そのまま、闇に堕ちていきそうでーーーー
青い果実 28
里に着いて早々、急いでサスケを病院に運んだ。
外傷の治療は入院でどうにかなるようだが、意識の方は強い術でやられたものなので自分達ではどうしようもないと、申し訳なさそうに医療忍者に言われてしまった。
こうなったらもう、ナルト達が連れてきてくれるという綱手の腕に希望を託すしかない。
リエは医務室で辛そうに眠るサスケの額に手を当て、祈った。
どうか夢の中だけでも、苦痛から開放されていてほしい。
笑っていてほしい。
自分に流れる、母方の夢咲の血。
夢咲の術は対象者の夢をコントロールすることが出来ると、夢の中で父親は教えてくれた。
母亡き今、その使い方はリエにはわからない。
だから、この祈りがサスケの為になるのかもわからない。
それでも、何かせずにはいられなかった。
こうなって改めて、自分がサスケの為に出来ることなど、ほとんどないのだと思い知らされる。
こんな些細なことしか出来ない自分が、悔しかった。
「…ごめんね…サスケ……」
そっと彼の頬にキスを落とし、リエは病室を後にした。