第18章 中忍試験二次試験〜死闘〜
リエの左手がザクに向け、真っ直ぐと伸ばされた。
そしてそれを勢いよく薙ぎ払うと、彼女を囲っていた風が形を変え刃となり、ザク目掛けて飛んでいく。
ザクは間一髪それを避けるも、風の攻撃は休みなく襲いかかってくる。
的にならぬよう、ザクは森の中を走り続けた。
しかし、仲間達の目が届かなくなったところまで来て、彼の足は急に前に進まなくなった。
目の前に大きな壁があるかの如く、何度挑もうと身体を突風が押し戻してくるのだ。
ザワザワと大きく木々が揺れる。
その音が、やけにザクの耳についた。
「…クソッタレが!!」
彼の中に、初めて僅かな恐怖が生まれた。
自分が今対峙しているのは、あの少女のはずなのに。
この大自然全てが、敵にさえ思えた。
迫り来る刃を己の風で迎撃するも、威力は桁外れに相手の方が上だ。
この戦いで、ザクは初めて己の身体に傷を負った。
そのことが、彼のプライドを酷く傷つける。
刹那
背後に感じた気配に、ザクは飛び退く。
地面に突き刺さったクナイには、起爆札がつけられていた。
すぐに爆破したそれすらも既で避けるが、その先にはリエが待ち構えていた。
「なっ…?!」
空中でバランスのとれない身体は、攻撃を回避する術も持たず、ザクの腹にリエの拳が入る。
その攻撃は、先程受けたときとはまるで違った。
重く、のしかかるような重圧。
決してこんな少女一人に出せる力ではない。
まるで、見えない誰かが、何かが、彼女の後押しをしているように。