第16章 xxx ending √1:TORU
荒々しい呼吸だけが残る。
愛の余韻。名残惜しさ。
射精したあとの気怠さなんて、ちっとも気にならない。腰にひびく疲労すら、今の俺には、愛しく思えるから。
くたりと横たわるカオリ。
覚えてる。初めて出会った日のこと。ツン、とした印象の横顔。美人だと思ったのはホントだよ。でも胸がザワザワした。
大嫌いだと思った。
殺したいと思った。
羨ましかったんだ。誰にでも愛されてて、何より、俺の最愛であった彼と仲睦まじくする君が。
嘘ついてごめん。
傷つけてごめん。
最低だよね、俺。自分の都合でひどく傷つけた。人間として、何より、男として、最もしてはいけないことをした。
二度と、会うことなんてない。そう思ってた。死の淵に立たされて、でも死ねなくて、絶望して無意識に向かった先。
クリスマスソング響く商店街。
思い出の、あの街角で、君は俺を助けてくれた。嘘かと思った。ああ、ついに幻覚が見えるって。でも、嘘じゃなかった。
──君はたしかに、ここにいる。
「カオリ、……俺ね、」
眠りに落ちてしまった彼女。
伏せた瞼。カールしたまつげ。初めて俺に【思いやる心】をくれたひと。俺の大切なひと。
俺はここにいていいのかな。君の側にいる資格はあるのかな。ずっと、ずっと、一緒にいてもいいの?
ねえカオリ、大好きだよ。
この選択が合ってるのかなんて分からない。俺は、本当は、君の側にいちゃいけないのかもね。だってそうだろ。俺たちの関係は、いや、俺が君に抱くこの感情は【依存】と呼ばれても仕方ないのだから。
「でも……カオリの、側にいたい」
それでも、誰に何を言われても、側にいたいんだ。永遠に。君の隣を歩いていたい。
俺はまた間違ってるのかもね。
でも、どうか、今だけは。
この温もりの中で、──眠らせて。
「愛してるよ、カオリ」
【TORU】___fin.