第1章 想い出語り①
3年の1学期も終わる頃だったが、ある日図書室に藤宮くんが来た。
図書室で藤宮くんを見るのは初めてだったから、よく覚えている。
席について本を読むわけでもなく、本棚の間をぶらぶらと歩きまわりながら、気になった本を手に取ったりするのを繰り返していた。
藤宮くんは次の日の放課後も図書室にやって来た。
図書当番だった私は貸し出しカウンターに座り、隣の子と志望校の合格率の話や受験勉強の事を話していると、藤宮くんが文庫本を持って目の前にやって来た。
「これ、借りたいんだけど」
そう言うと、表紙を裏返しにして文庫本をカウンターに置いた。
貸し出しの手続きを済ませると、何も言わずに藤宮くんは図書室から出ていった。
藤宮くんが選んだ本は、私も読んだことがある海外ミステリー小説だった。
「藤宮って不良のくせに本読むんだね。意外だわ。」と隣の子が呟いた。
私も同じことを思っていた。