第2章 秋といえばあれが来る
春は別れの季節で出会いの季節、その反対の秋は色々あり、◯◯の秋とよく言われる。そんな秋、9月にうちの学校は修学旅行へ行く。他の私立は海外に行くのに新設校だからか分からないが私立の癖に沖縄である。
さて9月で沖縄と言えば何か思い浮かばないだろうか、そう、台風の季節である。
「外に出られない!!」
「そうねぇ…今日の予定どうしましょっか」
「紅芋タルトソーキソバサーターアンダギーアイス魚…」
「食べることばっか考えないの、太るわよ」
「嫌」
リコにそう言われるとそうなるとしか思えないから嫌だ。と言うと彼女の携帯から音が鳴り、メールの着信を知らせていた。
内容を確認した彼女は立ち上がり、「行くわよ!」と言ってからどこに行くかも説明されず私を立ち上がらせて部屋を出た。
「で…なんで私はバスケ部のストレッチやらなんやらに付き合わされてるわけ…」
「ごめんなー苗字さん、カントク呼んだつもりだったんだが…」
「いやまあ、別にいいんだけど…ほら、あの」
「伊月がいるからか?」
「違う!違うから!」
顔を赤くしながら言う私の言い訳は彼らには意味がないらしい。そうだ、私は変なことだが彼のイケメンさとダジャレ好きというギャップに惚れてしまったのである。
修学旅行で会うことはないと思っていたが…台風に感謝しないこともない。
「苗字さん」
「い、伊月君!ストレッチ、しないの!?してこい!」
「え、あ、俺先にストレッチしててさ、それでみんなでしようって話になったんだよ」
「っ、じゃあ、みんなの手伝いとか」
「ああ、大丈夫。カントクが手伝っててオレ余ってるし」
「(なんつーことが重ねってんすか)」
いやあの、好きな人の話せるのは嬉しいけど。と言い訳を思いながら隣に座った伊月君はダジャレのノートを出していた。
そんな時、外の暴風が激しくなったせいで電気が消えたのか、部屋が真っ暗になった。
「暗っ!」
「あ、苗字さん、ちょっとそこ座って」
「お、え、あ、はい」
伊月君に言われた通り座ると彼は私の横まで寄ってきて、ゆっくりと肩にもたれかかってきた。
「いいいいいいい伊月君!?」
「シーッ、せっかくあいつらが気使ってくれたんだから」
「…は?」
そう言った伊月君は暗闇の中笑っており、ゆっくりと私の耳元である言葉を囁いた。