第1章 女心と秋の空
男心と秋の空、これは男性が女性に対する愛情は秋の空模様のように変わりやすいということ。しかし女心と秋の空は感情の起伏が激しい事を言う。
目の前にいる彼は今日それを知ったのか、私に向かって「苗字は秋の空じゃねーな」と言った。
「…今秋の空だよ、朝晴れてたのに降ってるよ、雨」
「そーゆーことじゃねぇよ、感情が出ねえっつか、わかんねえ、いつも笑ってるだろ?」
「ああ、黒子君みたいって事?」
「テツはバスケに感しちゃすげぇ出てる」
「今吉さん、みたいな」
「アイツは腹黒いだけだろ」
彼の発言に私は少し傷ついた。感情は精一杯出そうとしてる。だがあまり感情を顔を出していると女社会は生きられないのだ。
嫌な顔をしないためにいつも笑っていれば良い。そう、そうすれば問題ないはずなのに、それを指摘されると思っていなかった。
「男心と秋の空の方がわかりやすい気がするけど」
「俺はマイちゃん一筋だろーが」
「私は眼中にないんですか」
「…巨乳じゃねぇからな」
「そっか」
そう言って笑うと彼は少し不思議そうにした顔で私を見た。特に問題なんてない。さっきの発言で私の笑っている顔以外を見たいだけだろう。
「…嘘」
「知ってる。じゃなかったら私と付き合ってないでしょ?」
「付き合ってることに自覚あったのかよ」
「どっちから告白したと思ってんのよ」
あの時の私、かなり顔赤くして言ってたと思うんだけど。と少し笑うと青峰は何かに気づいたように目を見開いた。
嫌な感情を出さないだけで、私はしっかり他の感情は出すことに、気づいてなかったのかコイツは。
「…そんなんだと、ストレス溜まるだろ」
「そうだね、少し」
「出せよ、彼氏の前くらい」
「考えとく」
「秋の空出せよ」
「それはムリ」
まったく。と思いながら雨の中どう帰ろうかと悩んでいると青峰が私の後頭部に手を回して唇に彼の唇を重ねてきた。
これくらいで先程彼に言われた事がどうでもよくなってしまう私は、彼に言われるまでもなく秋の空だと思う。
でもこれを言ったらきっと彼は調子に乗ってしまうだろうから、内緒にしておくけど