第8章 お揃い
「ずっといれば?」
「それは名案ッスけどバレるっスよね!?」
イチョウも黄色くなってきて、目の前に黄色いのが隠れることが可能なのではないかと思える季節がやってきた。
ファンに追いかけられてる彼に思わず黄色い子供用のレインコートを渡して被ってこのままいれば彼はバレないだろう。絶対。
「だからそのまま居ればいいじゃん、バレないよ」
「苗字っちが一緒に居てくれるならそうするっス」
「やだよ帰る」
「ちょ、ヒドっ!」
ここでは無理だろうけど赤司君なら紅葉の場所にいけばきっと隠れることが可能だろう。そんなことを考えていると黄瀬は私の肩を掴んで揺さぶっており、その対応にと「アハハハハハ」と奇妙な笑いをすると黄瀬はヒッと私の肩を離した。
すると彼に振り回されるがままになっていた私はバランスを崩し、地面へと倒れた
「わー!!?苗字っちごめんなさいっス!」
「…イチョウだらけなんですけど」
「お揃い!苗字っち髪が黄色くなってお揃いっス!」
「…」
「あああああああスンマセン!そんな嫌な顔しないでホント!」
「いや、別に嫌じゃないけど」
私の発言に黄瀬は「へ?」とあざとく首を傾けてパチパチと瞬きをした。そんな彼の疑問にすぐ答えずに髪についたイチョウを落としてから彼の目を見た。
だけれども彼のまっすぐな目を見ると何故だか説明をしたくなくなってきて、視線を横にずらしてから説明を始めた。
「黄瀬とお揃いなら、まあ、嫌ではない…」
「…嬉しいってことっスか?」
「…」
「苗字っち可愛い!!」
「う、ちょ、あ」
先程せっかくイチョウをはらったというのに黄瀬は私を押し倒してギューッと抱きしめた。今なら背中も髪も、きっとイチョウがついて黄色くなっているだろう。
だが彼はそんな私を気にせず首元にすりすりと顔を寄せていている状態と、彼の重さで立ち上がることは無理と考えた。
「…はぁ」
「そうだ!苗字っち髪黄色に染めよ!」
「やだよ」
「えー…お揃いなのに…」
ムーとふてくされたような表情を見せた黄瀬はまだ綺麗で砂も何もついてない状態のイチョウを髪と一緒にを私の耳にかけさせて、手を離してから満足そうに笑った。
そして耳にそっと唇を落として、真っ赤になっている私をみて「紅葉みたいっスね」と笑っていた。