第7章 読書の秋ですが
前が少々見づらい状態のためにゆっくり1歩ずつしっかりと段を踏むようにして階段を歩いて、片手で荷物を支えながら扉を開けた。
すると予想通り彼がこれで良いのかと思う低い柵に寄りかかっていつも通り文庫サイズの本を読んでいた。
そんな彼に私は用事があるため近づくと彼は1度こちらを見てから本へと視線を戻した。無視かよおい。
「さあさあ読書の秋ですよ黛さん、読書しましょ」
「オレはいつも本を読んでいるだろう」
「ラノベですけどね!」
「何が悪いんだ」
「練習しましょうよ!?」
「お前今読書しろっつったろ」
いくらまだ練習開始時間じゃないからっていつまでもここで本読んでんのは目にも良くないし、赤司君にも怒られるぞ。
ドンッと屋上の床に本を置くと黛さんはまたチラリとこちらを見てから本の題名を見て「…ないな」と言って視線を戻した。
「…もう!運動しましょーよ!」
「じゃあ何でお前本持ってきたんだよ」
「バスケのために持ってきました」
「バスケの本じゃねぇだろそれ、なんで羅生門とか蜘蛛の糸とか芥川龍之介なんだよ」
「気分です」
「おい」
どうやったらこの人練習出てくれるんだろう…いや出てるんだけど、と考える素振りを見せると彼は私を見ずになぜか「空から女の子が降ってきたら考える」と言った。
なんで私の考えていることわかるんですか、まったくもう。
「…空から女の子が降ってくればいいんですね、分かりました」
「は?まさか、お前」
「大丈夫ですこのくらいの距離なら顔面から落ちても鼻血くらいです」
「おまっ、まて」
さすがに屋上から飛び降りたりするほどの度胸はないため、屋上の上のさらに上のところに登ってからピョンッって跳んだ。
するとやっぱり落ち始めた。いやでもそこまで高くないからもしも来なくても死ぬこたないだろうけどやばいやらかした。と思ってギュッと目を瞑ると黛さんが私の事を横抱きで受け止めて。
「ほら、降ってきましたよ」
「お前…さすがにやめろよ。あと」
「あと?」
「ダイエットしろ」
「…食欲の秋なんで、無理です」
そう言ってニコっと笑うと黛さんは溜め息を吐いた。だがそれでも彼は不敵に笑っており、どこか楽しげだった。