第6章 引退後
「サトリがいなくなってせーせーするわ」
「そんな事言うなっつの、わかるけど」
「わかんのかよ」
そんな会話を花宮としたのは何回目か、彼は朝練の時に必ず自分の苦手であった彼がいなくなったことを喜んでいた。
彼の性格は一応部が公認である。バスケ部入部でしばらくして彼の思い通りにしたあとに本性見せてしまったことで私も彼の性格、今吉さんの性格をしった。
「…まあ、確かに何考えているのかを当てられるは嫌だわ、うん」
「お前に同情なんてされたくねぇ」
「あー…何となくそんな事言われそうな気がしてたわ」
朝での出来事を思い出しながら放課後、委員会が終わってふと図書室の前を通るとサトリと呼ばれている今吉さんが勉強をしていた。
あの人なら多分スカウトが来るだろうし、そもそもそれなりに頭が良かった気がしたのだが、とポケーと見ていると彼は私の視線に気付いたのか顔を上げて、私の事を見てからこっちへ来いという意味なのか手招きをした。
「…どうも、お久しぶりです」
「やっぱ苗字やったか、久しぶりやのう」
「え、ああ、まあ…今吉さん受験だーなんだかんだーで引退後忙しそうでしたから」
「引退してからまだそんなたってないんやけどな」
彼が引退したのは秋になる少し前、現在はもう10月と、3年生にとって大事な時期ではある。が、バスケ部にいるとそんな気をさせなかった。
そんな事よりも次の代で少しでも良い戦績を、が今のバスケ部であるためだ。
「花宮はあいっかわらずワシの事を悪く言っとるようやな」
「そうですね…相変わらずです」
「苗字は高校どこ行くん?」
「来年にはきっと決まってます」
「それじゃちょいと遅いなぁ」
「…今吉さんは、どこいくんですか?」
そう聞くと彼は伸びをしてから「桐皇学園」と高校の名前を答えた。確かそこまで…有名ではないが、彼の学力ならば恐らく問題なしなのだろう、な。
「来年苗字も桐皇来たらええわ」
「は、」
「楽しみに待っとるで」
そう言ってケラケラと笑った彼は目をゆっくりと開いてからまた閉じた。
きっと彼、サトリには、私の想いなんてとっくの等に見透かされてるのだと思う。