第5章 今度こそ
秋はテツヤが昇格出来ずバスケへの希望を失い絶望した季節で、青峰を筆頭にしてキセキの世代がバラバラになってしまった季節。
なぜそんなに秋には嫌になる思い出が多いのだろうか、誰かにそう聞きたかった。
「…思い出すだけでも、胸が痛い」
それでも彼は、テツヤはもう1度立ち上がり彼らと戦う事を決めて今立っているのだ。さつきも泣いて何も出来ないことを悔やんでいたが、青峰のそばでまだ彼を支えている。
私も何も出来ずに彼らの下を離れてしまったが、今は彼を、テツヤを支えられていると思う。
「彼らが負けるとは思えない、だけど」
テツヤと火神を見ていると、勝てる気がしてくる。そう思いながらまた1歩、歩いた。
キセキの世代で緑間以外は既にWC出場を決めている。特に2人、赤司君と青峰はI.Hで結果が出てすぐに決まった。
彼に遅れをとらないように、勝ち進めないと。と思っていると前にいたテツヤがふと私を見て、少し驚いたような表情をした。
「苗字さん…?」
「あ、テツヤ、なんかあった?」
「いえ、怖い顔をしてたので」
「大丈夫、何もないよ」
そんなに怖い顔をしていたのか、緊張しすぎたかも、と思い頬を優しく叩くとテツヤは少し笑ってから真面目な顔をして前を向いた
私の目の前にはWC東京都代表2校を決めるための決勝リーグのための会場がそびえ立っている。
「さあ、行きましょうか」
カントクの言葉に大きく息を吸って、そしてまた吐いた。
今からあなた達に、挑戦しに行きます。