第3章 【裏】誘い誘われ ~前田利家~
「――大丈夫か?」
「…うん…」
同じ褥の中、私は犬千代の顔を直視できずにいた。
(あんなに乱れちゃうなんて…恥ずかしい…)
私は顔を見られないようにと、犬千代の腕の中へ入り、首元に顔を寄せた。
「ずいぶん甘えただな」
「うん…犬千代にだけね?」
「…知ってる」
そう言いながら犬千代は私のおでこに唇を押し当てる。
「……好きだ」
「…知ってる」
ふふ、と笑うと犬千代はちょっと拗ねたような口調で、
「そこは"私も好き"だろ」
と言った。
「知ってるくせに…」
犬千代の首筋にちゅ、と口づけて私は目を閉じた。
(今日は言ってあげない)
翌日の朝、寝起きのぼーっとした状態の犬千代の耳に囁くのだ。
そしてその後再び押し倒されるとは思いもせず。
End