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平凡な私と非平凡な彼等

第4章 雲雀恭弥 雲雀side


「んんっ・・・やっ・・・はっ」


唇同士を離すと、柿澤に強く睨まれる。しかし、先程僕自身がしたキスを受けたせいで睨んでいるつもりなのだろうけど、煽っているようにしか見えない。


「なんで・・・」


僕に疑問をぶつけたそうな柿澤をフェンスに追いやる。カシャと音を立ててフェンスが鳴る。それでも睨むのをやめない柿澤の頬に手を添える。


「嫌だったらビンタでもすれば良かったでしょ」


柿澤にそう言うと一瞬考えた素振りを見せたあと、僕の目を真っ直ぐと見つめてゆっくりと口を開く。


「貴方強いでしょ。ビンタなんてしても意味がないし、効きもしない。ビンタをするぐらいだったら他の事してる」


たぶんと付け足して言う柿澤に自然と胸が高鳴るのがわかる。僕が惚れた女が僕を睨みながら正論を言うため、背筋が震え上がる。こんなにも僕の事を見抜くのが早いなんて思っても見なかった。


「まぁ・・・それもそうだね」


僕がそう言うと目の前の彼女は小さく笑う。肩より少し長めの黒髪が風に靡き、昔と変わらぬ笑顔が少しだけ見える。
そんな姿も愛しくて今すぐ抱き締めて、僕の色に染めたいと思ってしまう。


「で?結局名前は?」


「雲雀。雲雀恭弥」


「雲雀・・・ね」


柿澤は僕の名前を忘れぬように一生懸命、呟いている。相変わらず物忘れの激しい子だが、それなりに覚えようとはしてくれている。それがまた嬉しくて恥ずかしくて、なんとも言えぬ気分になる。僕の想いなんて目の前にいる彼女はわからないだろうけど。


なんて、思いながら柿澤の腕を引っ張り抱き寄せる。一瞬、何が起こったか理解のできていない柿澤は固まり、僕を見上げる。僕は、柿澤の髪を救い上げそっとキスをする。そして、柿澤の耳元でゆっくりと囁く。


「僕の名前・・・忘れたらさっきのよりもっと凄いことするからね」


それだけ言って僕はその場を後にする。屋上へと続く階段を降りながら、柿澤の事を思い出す。あんまり変わっていなかった。


「委員長。何か良いことでもありましたか?」


「草壁・・・別に」


「そ、そうですか」


僕の側にやって来た草壁の書類を持ち、屋上へと続く階段を見上げてそっと微笑んだ。
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