第1章 嵐の前の静けさ
「百合。帰ろ。」
「桜ちゃん!帰ろぉ〜♡」
ふわり、揺れる長い栗色の髪の毛。
少しウェーブがかかった、美しい髪。
そしてそれに釣り合う美しい容貌。
甘いとろけるような自然な香り。
まさに、彼女は完璧だった。
『やだ…薊さんだわ…今日も美しい…』
『羨ましい…私も薊さんみたいな人になりたかった…』
『百合先輩綺麗…』
『デュフw百合たそいい匂いするぉhshs』
『薊さんっていつも綺麗だよねぇ…』
そう、薊 百合はこの学院の名物―――
この世とは思えない程の絶世の美女である。
いや、それだけでは足りないくらいに美人なのだ。
他校の男性人気は勿論のこと、同級生先輩後輩の女性人気も高いのだ。
まぁ、この国立花ヶ丘学院は女子校なので――――
「あ、薊さん…一目見たあの日から好きになりました。
付き合ってください!!!!」
こういう事もしばしば。
週1か2、多くて4くらい。
そして返事は決まって、
「ごめんなさい…」
だ。