第6章 ねじ花ーペインー
何となく、何となく道端の花を摘んだ。
何という名の花だろう。細い茎を小さな花弁がクルリと取り巻いて、白と濃い桃色が鮮やかだ。
変わった花だと思った。可愛い花だとも思った。
そうしたら、小南に見せたくなった。
こんなとき、弥彦なら何と言って小南を喜ばせるだろうと考える。
小南は喜んでくれる。不器用な俺にも。そんな小南だから、花を摘んだ。一緒にこれを見たくて。
一緒に見て、喜んでくれる小南を見たくて。
弥彦
すまない、弥彦
もう少し、お前のところに行くまでもう少し、俺に小南を独り占めさせてくれ。
何という名の花だろう、これは。
「ねじ花というの。螺旋を描きながら空を目指して咲く花よ。好きな花だわ。フフ」
小南が笑う。
胸が痛んだ。
小南に幸せを。弥彦に安らぎを。
俺には痛みを。
ねじ花の螺旋は俺の螺旋だ。遠回りしながら行き場所を目指す。
遠回りしても目指すところは変わらない。
悲しくなる時もある。
何でだろうな。
小南が側にいる。弥彦にもうすぐ会える。
何で悲しいんだろうな。
螺旋を描いているせいか。遠回りの時間が悲しくさせるのか。
今はこの時だけだと解りすぎているからかな。
ねじ花、次は摘むまい。
届くまで天に螺旋を描け。