【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)
第11章 謎の男と不穏な動き
――・・・ジルと別れて、
執務室で本を開く。
(二国間以外の貿易は、原則禁じられている・・・)
分厚い本から視線を外して息をつく。
「・・・・・・」
机に頬杖をついて
遠くの壁を見つめると、
不意にジルの言葉が蘇ってきた。
ジル「貴女の一挙一動が、全て二国同士の信用に関わってきますから。ハワード卿は、出向くことを懸念されたのかもしれませんね」
「・・・そう」
ジル「それに・・・・・・」
ジルは口元に手を添えると、
聞き取れないくらいの声で呟く。
「・・・?」
ジル「いえ、それではご決断はプリンセス・・・貴女にお任せしましたよ?」
(ジルはあの時、なんて言ったんだろう・・・)
もう一度今度は大きく息をついて、
渡された招待状を指先でそっとつまむ。
目線の高さまで
招待状を持ち上げたその時、
すっと後ろから突然手が伸びてきて、
耳元で聞いたことのない声が響く。
?「・・・・・・こんな時間までお勉強か?プリンセス」
「・・・・・・っ・・・」
手元から招待状を奪われて振り返ると、
そこには体格の良い男の人が
不敵な笑みを浮かべて立っていた。
?「ウィスタリア経営者、ルイ=ハワードか。随分ご立派な肩書じゃねえか」
「・・・・・・誰」
警戒から、声が低くなる。
?「名前を尋ねるなら、先に名乗るのが筋だろ」
「・・・勝手に部屋に入って来た人に、自分から名乗る筋合いはない」
?「・・・・・・へえ」
その男は
面白そうに口の端を持ち上げる。
シド「俺の名前はシドだ。お前のことは噂で聞いてるぜ」
(シド・・・・・・)
「噂・・・?」
シド「ああ。日本から来た元令嬢で、ルイの秘書気取りだってな」
「・・・・・・。貴方はルイの知り合いなの」
シド「まあ、そんなようなもんだ」
私を一瞥すると、
シドはまた招待状に視線を投げた。
シド「・・・なあ、お前はルイに利用されてるとは思わねえのかよ」
「・・・どういう意味」
シド「言葉通りの意味だろ。経営者としてお前を見たら、良い宣伝材料じゃねえか」
眉を寄せると、
シドは楽しそうに首を傾ける。