• テキストサイズ

【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)

第9章 親善パーティー大作戦





ルイ「・・・どうして君がここに」

 聞こえた声にゆっくり視線を上げると、
 そこにはたくさんの本を抱えて立つ、
 ルイの姿があった。

「・・・親善パーティーの招待状。ジルに書き方を教わってた」

ルイ「・・・・・・そう」

 ルイは一瞬だけ、
 机の上に積まれた招待状に視線を移す。

「ルイは?」

ルイ「これを戻しに来ただけ」

 抱えている本に視線を落として、
 空いている場所にその本を静かに置く。

「・・・そう」

 小さく呟いて、
 私はまた招待状にペンの先をつけた。

 するとルイの影がすっと手元に落ち、
 繊細な指先が
 一枚の招待状を取り上げた。

ルイ「・・・どうして、メッセージが全て手書きなの。・・・こんなことやってたら時間がいくらあっても足りないと思うけど」

(・・・まあ、そう思うよね)

「・・・私の、気まぐれ・・・?」

ルイ「・・・どうして疑問形なの」

「さあ・・・」

 怪訝に眉を寄せるルイの言葉を
 はぐらかして、目を伏せる。

(・・・本当は、)

「・・・形式的な物でも手書きのメッセージが添えてあると、少しは興味を持ってもらえるでしょ」

ルイ「・・・・・・」

 ルイは招待状をすっと机に戻すと、
 本棚から本を手に取って
 少し離れた場所にある椅子に
 腰を下ろした。

「・・・?」

ルイ「・・・・・・調べ物があるだけ。気にしないで」

「・・・わかった」

 ルイが本を捲る音と、
 私が招待状にメッセージを走らせる
 微かな音だけが、
 静かな部屋に響いていく。

(・・・なんだろう、この空気)

 静かな部屋に確かに響く、
 二人分の息遣い。

 重たいはずの沈黙が、
 なぜだか心地良いとさえ
 思えた・・・――。


/ 221ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp