【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)
第1章 プロローグ
ノア「びっくりさせてごめんねー」
驚くほど穏やかな笑みで謝罪され、
呆然とする私を残して
ノアさんは俺様男を連れて去って行く。
そんな二人のどこかちぐはぐな背中を
見送っていると、
不意に男の子が声を上げた。
(・・・?)
男の子の視線の先には、わが子を捜す
母親と思われる女性の姿。
私は男の子の手を取って、
小さく微笑んだ。
「・・・ママのところ、行こっか」
近寄って、女性に声をかける。
母親「もうっ、どこ行ってたの!ずっと探してたのよ!?」
強い口調とは対照的に、
泣きそうな顔で母親は
男の子を抱きしめた。
男の子「ごめんなさい!でも、このおねいちゃんが一緒にママを探してくれたんだよ・・・?」
男の子が私を指差すと、
母親はしっかり背筋を伸ばして
頭を下げる。
母親「この子が、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
「・・・いえ。無事見つかって、良かったです」
ゆっくりと、母親の隣で私を見上げる
男の子に視線を移す。
男の子「・・・おねいちゃん、ありがとう」
(・・・・・・っ・・・)
何の汚れも知らない、
無垢な笑顔を向けられて
ほんの少しだけ戸惑ったけど、
私は男の子の目の前に
すとんとしゃがむと、
しっかり男の子の目を見つめて言った。
「・・・・・・もう絶対に、ママの手を離しちゃ駄目だよ」
男の子「うん・・・」
反省したように俯く男の子の前に、
そっと右手の小指を差し出す。
「・・・それじゃ、約束」
男の子「・・・・・・うん!」
ほんの僅かな間の後に、
男の子は満面の笑みで頷き
私の小指にその小さな指を絡めた。
そして今度こそ、
離れないようにしっかり手を繋ぎ
去って行く親子を、
小さく手を振って見送る。
親子が人混みに紛れ姿が見えなくなると、
私は振っていた手をすっと下ろして
小さなため息をついた。
(・・・?)
不意にすっと目の前に影が落ちて、
声が響いた。
?「ようこそ、ウィスタリア王国へ」
よく通る低いけど艶のある声音に
視線を上げると、
そこには赤茶色の瞳を持つ長身の男性が、
艶麗な微笑みを浮かべていた。