【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)
第5章 選ばれしプリンセス
―――・・・
(・・・・・・っ・・・)
冷たいガラスの靴に踵がすっと収まると、
ホールのざわめきが嘘のように
静寂に包まれる。
(・・・嘘、でしょ・・・)
そう思った瞬間、
どこからともなく
わあっと歓声が上がった。
「・・・・・・っ・・・」
ユーリ「・・・零様、おめでとう!」
もう片方のガラスの靴を
私の足に履かせながら、
ユーリが笑顔を向けてくる。
「・・・・・・」
状況とユーリの言葉に戸惑っていると、
側で見守っていたジルが
私に一歩近づいて言った。
ジル「・・・プリンセス誕生です」
そっとジルを見上げると、
ジルは私の肩を抱いて高らかに告げる。
ジル「皆様、ご注目ください。ガラスの靴に選ばれしプリンセスは、桐谷零様です」
その瞬間、
たくさんの人の目が自分に向けられて
私は思わず息を呑む。
「・・・っ・・・・・・」
会場中から集まる視線に耐えられず、
私は自然と視線を伏せた。
ジル「彼女はこれより、正式なプリンセスとなります」
そんな言葉にジルを見上げると、
艶やかな笑みでこう言った。
ジル「宜しくお願いしますね、プリンセス・・・?」
「っ・・・・・・・・・」
こうして私は、
日本から遠く離れた異国の地で
突然プリンセスをやることに
なってしまったのだった・・・――。