【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)
第3章 悲しい夜と誓いの朝
翌朝・・・――。
ユーリ「目、腫れなくてよかったね。零様」
朝いちで昨日の私を心配したユーリが、
部屋を訪れていた。
本革張りのソファに身を沈め、
閉じていた重たい瞼を上げる。
結局、昨夜は一睡もできなかった。
眠ってしまったら、
戻れない闇に
引きずり込まれそうな気がして。
怖くて眠れなかった。
だけど・・・、
涙は予想よりずっと早くにひいてくれた。
おかげで、
今日のパーティーには
なんとか出席できそうだ。
「・・・心配、かけてごめん。でも、もう大丈夫だから・・・」
(・・・・・・大丈夫、か・・・)
・・・本当は、ユーリに言ってるつもりで
自分に言い聞かせてるだけなのかも
しれない。
ユーリ「そっか・・・」
ユーリはどこか少し複雑そうな顔で頷くと、
気を取り直したように微笑んだ。
ユーリ「昨日いい茶葉が手に入ったから、今朝はこのお茶をどうぞ?」
そう言ってユーリが差し出したのは、
私が日本に帰ると
よく飲んでいたと話した玄米茶だった。
「・・・・・・玄米茶?」
カップを口元に運ぶと、
玄米の香ばしい香りが鼻孔をくすぐる。
ユーリ「零様が好きだって言ってたから、城下に行った時に買ってきたんだ。日本のお茶も、色んな種類があるんだね」
「勉強になったよ」と微笑むユーリ。
「・・・ありがとう・・・・・・嬉しい」
さり気ない気配りが本当に嬉しくて、
自然と顔が綻ぶ。
そんな私を見て、
ユーリが一瞬その大きな瞳を見開いた。
ユーリ「・・・零様は、そういう風に笑ってるほうが似合ってるよ」
「・・・え?」
にっこりと笑ってユーリは私を覗き込む。
(え・・・私今、どんな顔してた?)
ユーリ「あ、また戻っちゃった・・・」
そう言って、
ほんの少し残念そうな顔をする。
ユーリ「でも、零様の笑った顔初めて見た」
ふっと目元を緩めて、
今度は嬉しそうな顔になる。
「・・・・・・」