【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)
第18章 境界線のその先に
零が部屋を出て行くと、
ルイは赤く染まる首筋に手を添えて
ため息をついた。
ルイ「・・・味、移った」
そう行って小さく笑うと
ルイはソファから立ち上がり、
机の上に置いてあった書類を手にした。
・・・・・・・・・・・・
ルイはその足でジルの部屋の扉を開けた。
ジル「・・・・・・書類は確かに受け取りました」
ルイ「ああ」
ジルが書類に視線を落としていると、
ルイがふっと呟く。
ルイ「今回の一件は、迷惑をかけた」
ジル「貴方が謝る必要はありませんよ。孤児院も会社も、ウィスタリアには必要不可欠なもの。こちらが、お礼を述べるべきところです」
ルイ「・・・そう」
窓から差し込む陽ざしに
目を細めるルイを見て、
ジルは言葉を選ぶように言う。
ジル「国王陛下より、そろそろ次期国王を選びたいとのお声を頂いています。ハワード卿、貴方に首を縦に振って頂きたいと」
ルイ「・・・ジル、ずっと迷ってきたんだ。孤児院の出自でどこの血かもわからない俺が、次期国王になることは許されるのか。次期国王になって、色んなものを守っていけるのか」
ジル「・・・・・・もう答えは出ている、といった表情をされているように見えますが」
その言葉に、
ルイの瞳に力強い光が灯る。
ルイ「前を向く強さを、教えてもらったから。・・・あと少しで、答えを出す」
ジル「かしこまりました、気長にお待ちしていますよ・・・?」
立ち去るルイの背中を見送ると、
ジルは目元を微かに緩めた・・・――。