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【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)

第18章 境界線のその先に







ルイ「・・・・・・・・・零?」

 橋の向こうで、
 ルイが目を見開いて立っている。

「・・・・・・どうして」

ルイ「・・・君が、シュタインに向かったってジルから聞いて。今からシュタインに向かおうとしてた」

 掠れた声が風に乗って聞こえてくる。

(早く、聞かなきゃ)

「ルイ、視察の結果は・・・?」

 私の問いかけに答えるように、
 ルイの顔に
 ゆっくりと笑みが広がっていく。

 それは今まで
 見たことがないくらいの笑顔で、
 私はひどくほっとした。

(・・・・・・・・・良かった)

 遠く離れたその姿に、
 私は思わず駆け出して行く。

 音もなく落ちる
 通り雨の中を夢中で駆け抜けて、
 ルイの体に手を伸ばす。

 飛びつくように抱きしめると、
 ルイが後ろへよろめいた。

ルイ「・・・!」

「・・・っ・・・ごめん」

 らしくない行動に
 はっとして離れようとすると、
 抱き締めた以上の力で
 抱すくめられた。

(・・・っ・・・・・・)

ルイ「・・・いい。このままで、いて・・・」

 ルイの腕の中で小さく頷くと、
 優しい手が髪を撫でていく。

(・・・心臓が、うるさい)

 小さく息をつくと、
 頭の上がら声が落ちた。

ルイ「・・・文書が届いたよ」

「・・・少しは、役に立った?」

ルイ「・・・・・・少しどころじゃない」

 静かに笑むと、
 ルイの声が震える。

ルイ「君にはいつも・・・、助けてもらってばかりだ」

 抱き締め合う体は、
 まだ微かに降っている雨のせいで
 冷たい。

 だけど、
 こうして抱き合えば
 温かくなることを、
 私たちは知っている。

ルイ「零・・・」

「ん?」

ルイ「俺は・・・自分自身と君を重ねてた」

 見上げると、
 ルイの綺麗な瞳が
 私を真っ直ぐ見つめている。

「・・・知ってたよ。私も・・・、ルイを自分と重ねてた」

ルイ「え・・・?」

 ルイの瞳が見開かれる。

「・・・私もね、ルイと似たような境遇だから」

ルイ「零・・・・・・」

 ルイはそれ以上聞こうとしない。
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