第13章 そういう男
「お前、俺がチョコ用意してたの知ってたのか?」
「いや、知らない。だが用意するだろうとは思っていた」
「…なんでだよ」
エスパーかお前は。
訳が分からずただ首を傾げる事しか出来ない俺に、小太郎はフッと笑みを零す。
「お前はそういう奴だからな。なんだかんだ言いつつ、俺の為に何かしら用意すると思ってただけだ」
自信に満ち溢れ堂々とした小太郎の言葉に何も言い返せない。恥ずかしさと嬉しさが入り混じり、再び顔が上気する。
「ありがたく食わせて貰うぞ。八雲のチョコ」
柔らかな彼特有の笑顔には嬉しさが含まれていた。
店で買っただけのチョコなのにと思ったが、彼はそういう男だ。
俺はただ「どうも」とだけ答え、改めてやはり彼の方が一枚も二枚も上手で、当分勝てそうもないと実感させられた。