第10章 告白の言葉
「…ごめんね」
その言葉を残し、八雲は教室を飛び出していった。
俺は後を追う事も出来ず、その場に立ちすくむ。鼻の奥がツンと痛んだ。
「……好きだ…八雲」
ずっと言えなかった気持ちを、その場で小さく呟いた。
好きになったあの時から、いつかは伝えたいと思っていた。あいつの笑顔を見る度に込み上げてくる『好き』だという言葉。
勇気を持てずになかなか言えなかった告白の言葉は、口に出すと案外簡単なものだった。
「ずっと好きだったんだ、八雲」
とめどなく流れ出る涙を拭う事なく、俺は声を殺して泣いた。
「好き…八雲、好きだ…」
もう届かぬ想いを、何度も口にする。きっと最初で最後だ。
俺はもう、二度とこの言葉を口にしない。