第1章 はじまり
流魂街の外れに父と二人で住んでいた。
父方の一族は霊力が高く、現世で生きていた頃は呪術師のようなことをする者が多かったという。
父も僅かながら呪術を使いこなすことができた。
しかしその霊力を狙われ虚に襲われてしまった。
呪術で応戦し魂魄を喰らわれることは防いだが命を落とすことになってしまった。
生まれて間もなくの私も一緒に死んだのだという。
「優姫、赤ん坊だったお前を俺は守れなかった…」
ポツリと呟いた父の苦しそうな声を忘れられない。
「優姫、お前の霊力はどのくらいまで強くなるのか俺にはわからない。お前の力は一族の始祖の霊力に似ているようだ。慈愛と破壊の力を持った方だったそうだ。」
まだ幼い子供の私を心配して父は私に霊力を抑える為の訓練をした。
この流魂街でも稀に虚に襲われることもあるのだという。
強い霊力は虚を惹き付ける。
父は自分の霊力よりも私の霊力が強くなったと気付いた時、その呪術の知識の全てを駆使して私の霊力に封印をした。
「優姫、感情を大きく動かしてはいけないよ。悲しみや怒り、憎しみがこの封印を解いてしまう。どうかお前の力が愛情と癒しにみちたものであって欲しいと俺は願っている。」
そうして暫くは親子二人で静かに暮らしていた。
父の愛情をいっぱい感じて、私は幸せだった。