【ハイキュー!!短編集】Step by Step!
第1章 君のとなり【菅原孝支】
「俺なんて、まだ下手で試合に出してもらえないし」
並んで歩きながら、俺は言う。
どんな言葉なら彼女を励ませるか探しながら。
「でも」と今度は彼女が口を開いた。
「私は、菅原君のトス好きだよ」
俺は驚いて隣を歩く彼女を見た。
「え…?」
「私、中学の時から菅原君のプレイ見てたもの」
そう言って彼女はこちらを見上げ、微笑んだ。
「次にボールを打つ人のことを考えた、優しい丁寧なトスだと思う」
「あ、ありがとう」
今度は俺が泣きたくなる番だった。
彼女は俺が知る前から、俺のことを見つけてくれていたんだ。
その後は言葉が見つからず、二人共ずっと黙って歩いた。
嫌な沈黙じゃなかった。
すべて許してくれる優しい沈黙。
この時から俺は
君のことが好きになったんだ。
fin