【ハイキュー!!短編集】Step by Step!
第5章 不器用な恋【田中龍之介】
午後の授業開始から10分。早くも私の斜め前の席からは、低い寝息が聞こえてくる。
坊主頭に鋭い目つき。
彼女いない歴16年。
単純バカで分かりやすいから、いつもクラスの笑いのネタにされてるようなヤツ。
私の幼なじみーーー田中龍之介はそんなヤツだ。
ちょっと前まではコイツの寝顔を見ても、呆れたりとか、後でからかってあげようとか、そんな事しか考えなかった。
…なのに、無防備なかわいい寝顔を見ると、最近は不覚にもドキドキしてしまう自分がいる。
…なんなのよ、もう…。
そんな自分がちょっと悔しくて、私は手元の教科書に視線を落とす。
私がこうなってしまったきっかけは一ヶ月前。ようやく桜が花開いた四月の半ばのこと。