第17章 相棒――迅悠一(中)
ここは玉狛支部
中から聞こえてきた声に迅は苦笑した
そして、実力派エリートこと迅悠一の部屋のとなり、「入るな!」とマジックで書かれた紙が貼ってある扉を、迅は躊躇いなく押し開いた
「夏海ー、入るぞ?」
『……………悠一?』
紙に「入るな!」と書かれている割に部屋は片付いている
しかし、この部屋は異常だった
窓と扉を除く壁一面を、天井につきそうになるほどの本棚が覆いつくし、その真ん中にベットがある
そのベットの上に夏海と呼ばれる人物がいた
夏海は手に持っているマンガから視線を迅へと向ける
上げられた顔はじつに整っていた
誰もが羨む容姿、頭もよく運動神経も申し分ない
この女こそ完璧と呼べる女性だった
……………一つの問題を除いては……………
部屋一面を覆っている本棚には隙間がないほどの漫画が並べられていた
そのジャンルは様々…………
気になったものはすべて手にとり購入する
夏海はボーダーの給料をすべて漫画に費やしているのだ
ゲームを作戦室に持ち込んでいる太刀川隊のオペレーター国近以上に漫画に金をかけ、漫画がないと生きていけない………………
…………………それがその女夏海の欠点といえるものだ
そして、この欠点が完璧な美貌を無意味なものとしている
『どうしたの?悠一』
迅の真剣な表情を読み取ってか漫画を本棚に戻す
「ちょっと手伝ってほしいなーって」
『手伝い?』
「今太刀川さんたち遠征部隊が遠征にいってるんだけど三日後に帰ってくるんだ。
それで三輪隊と一緒に玉狛の新人、ネイバーの空閑遊真の黒トリガーを狙って来る」
『………新人?………誰それ………?』
部屋に引きこもっている夏海はそもそもその新人というのを知らない
「まぁ、それは全部終わってから紹介するよ。ちなみに、新人は3人入ったから」
『よく、桐絵が認めたね』
「ボスの名前を出したから」
『さすが』
「で、本題なんだけど―――――」
迅が作戦の説明をしているのを横目に太刀川や風間との戦いにワクワクしていた
その表情を見てか、迅は説明を中止する
「…………ったく、聞いてる?」