第9章 初恋――三輪秀次
『ありませんよ?』
「ねーのか!?」
「今まで好きになった人は!?」
『い、…………いない……ですけど………』
四人ともすごい剣幕で聞いてきた
「マジか!!初めての好きな人にあそこまで積極的になれるとかやべーな!」
『だって、あった瞬間ホントに好きって思ったんだよ!』
私は陽介と公平に詰め寄る
「わかったから!」
「んじゃ!悩んでねーでいつも通りいってこい!」
と、公平にバシッと背中を叩かれる
そして、追い出されるようにして私は食堂を出た
『何よ……………………皆して追い出そうとするなんて……』
ドンッ
下を見ながらぶつぶつ言って歩いていると誰かにぶつかった
『……いてっ!』
背中から倒れたため痛みを覚悟したが、腕を引っ張られその痛みが来ることはなかった
自然と瞑っていた目を開けると、黒い学ランが目に飛び込んできた
「………大丈夫か?」
聞こえた声にバッと顔を上げると、秀次の顔が正面にあった
『しゅ、秀次///』
私は恥ずかしくて離れようとしたが、足がもつれて後ろに倒れてしまった
「…………うわっ!」
『………あっ!』
バタッ
痛みがなく唇になにかが当たっているのがわかり、瞑っていた目を開けると、秀次の顔があった
そして、私と秀次はキスをしていた
『ごっ、ごごご、ごめんなさい!!!』
私は飛び起きて秀次から離れた
秀次は体を起こし、下を向いていた
『本当に………ごめんなさい……』
恥ずかしさと、後悔と、色々な気持ちが混ざって私の声はどんどん小さく消えていった
「………おい」
『は、はぃ……』
秀次は立ち上がって、まだ床に座り込んでいる私の手をとって立ち上がらせた
「怪我は?」
『………へ?』
私は責められるとばかり思っていたため言葉を返すことができなかった
「だから、怪我はないか?」
『………えっ!?あ、う、うん………』
「ならいい……」
それだけ言うと、秀次はきびすを返して歩いていってしまった