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ワールドトリガー【中・短編集】

第64章 その先――風間蒼也


『風間さん!』

そう呼ばれて振り向くと朝霧がものすごいスピードで走ってきた

『三雲くんに負けちゃったって本当ですか!?』

ゼェゼェと息を切らす朝霧の背中を擦ってやる

「ああ。24勝1引き分けだ」

『どうしてですか!?風間さんは三雲くんに負けるほど弱くないのに!』

「そう言うな。読み合いで三雲の方が上だったんだ」

『むー……』

納得いかない、という顔で俺を見る朝霧

その姿が可愛いと思ってしまう

『じゃあ私が仇とってきます!』

踵を返して今にも走り出そうとする朝霧の手を掴む

「待て。そこまですることじゃない」

『でもっ』

「それより、俺と訓練する約束だっただろう?
俺との訓練は後回しか?」

『……ぐっ……。……わかりました』

「いい子だ」

頭を撫でると少し嬉しそうにしてから頬を膨らませた

『子供扱いは……嫌です』

「悪い悪い。じゃあ、訓練行くか」


『……。はい』

少し元気がないような返事だったが、俺はそのまま歩いていった









前を歩く風間さんの後ろ姿を見つめる

やはり私は後輩で弟子という枠から出ることはできないのだろうか

風間さんと話すたびに、剣を交えるたびに、どんどん大きくなっていく気持ちをどうすればいいのかわからない


あなたはもう覚えていないかもしれないけど、ネイバーに喰われそうになっていた私を助けてくれた後ろ姿は今でも思い出せるんですよ


私が風間さんと同い年ならこの気持ちを伝えられたのでしょうか……


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